2022/10/18 18:20

ご無沙汰しております。大社長です。

寒くなってきましたね。いよいよ冬服でのファッションが楽しい季節になってきました。

私もだんだんと私服が分厚くなってきました。
インスタで「#日本一私服がダサい古着屋スタッフ」
というタグで投稿してます。

大した投稿ではないので
この世の全ての暇つぶしを網羅した後にでも、
ぜひ覗いてみてください。


さて、タイトルの話ですが、
「人としてヤバい劇団員がいたんですよー」というお話です。

私が主催を務めていた劇団を結成して、
3年目ぐらい、私が24歳の時のことです。

当時の私は役者としてバリバリに働いていた時期で、
バイトも二週に一回働けば
一人暮らしで充分生活できる状況でした。

劇団としても、私を含めた古参が3人、
その次にキャリアの長い中堅が2人、
若手が5人の10人体制で
本公演を打てば少しずつ黒字が出せるレベルにまできていました。

本当にねえ、もうちょっとだったんですよ笑。
「売れかけて」はいたんですよ。
芸能って難しい世界です。

で、タイトルの人物は、若手のうちの一人だったのですが、
年齢は私より2つ年下の女の子。
まあ、私自身がデビューが早かったため、「古参、中堅、若手」といっても
そんなに年齢にばらつきはありませんでした。

入団の時から異変は感じていました。
まず「本名が明かせない」とのことでした。
もちろん、芸名で活動で活動している役者さんもたくさんいます。
だから問題はないはずなのですが、
こちらが「何て呼べばいい?」と聞くと
「色んな活動してて、名前使い分けてるんですよ。好きな名前で呼んでください。」
とのことでした。

まあ、問題は何もないです。
ただ、この人とは深く関わらない方がいいな、とは思いました。
それでもやる気はあるようだったので、
正劇団員として受け入れることにしました。

ほどなくして、火種となる事件が起こります。
私と、古参1人、中堅1人、件の子の4人で食事をしていた時のこと。
中堅の劇団員がスマホを見て、申し訳なさそうに我々に言いました。
「あの、祖母が亡くなったみたいで、今週ちょっとお休みしても大丈夫ですか。」

もちろん許可しました。通夜、告別式のスケジュールもあるかと思いますが、
すごく家族を大切にしている子だったので、
私は「気持ちが落ち着くまでゆっくりしな」と言いました。

見るからに落ち込んでいて、辛そうでした。
私と古参は、何とか言葉を選びながら励ましていたのですが、
件の子が明るい口調で急に口を開きました
「それってそんな悲しい出来事なんすか?」

場が凍りつきました。
聞くと件の子は家族とうまく行っていなかったようで、
「家族を失って悲しい」という感情が
理解できなかったようです。

それでも、大切な人と死別する悲しさはわからないものか
と思いましたが、
「そんな人いないし、経験がない」とのことでした。

とりあえず私は、
その場を収めるための説教をし、
謝罪をさせ、
「今日ここで起こったことは、他の団員には他言無用で」
ということで終わらせました。

とはいえ、その場にいた我々3人は、
もう既に彼女のことを信頼することができませんでした。

その後、本公演の準備が始まるのですが、
ある日彼女から「私が描いた台本をやらせて欲しい」
と、喫茶店に呼び出されました。

どうやら高校の時に、仲間内で演劇の真似事をやっていたようで
その時の台本を渡されました。

つまらない物語ではないのですが
所詮「高校演劇レベルでは良い方」なくらいで
これをプロとして、人様からチケット代をいただいて
人前で披露するのは不可能だろうと判断して、
却下しました。

まず、本公演の脚本は皆で話し合って、
どんなコンセプトの物語にするかとか、
誰が何を担当するかとか、
緻密に話し合って決めていくです。

一若手がフライングで主宰を呼び出すこと自体、
ルール違反じゃないか、とは思ったのですが、
もはや信頼していない人間を怒る気にもなれず、
泳がせていました。

却下された後も、いくつか彼女が書いた脚本を持ってきており
結局何本か目を通しました。
そして、ちゃんと理由を述べて突っぱねました。

「これは説明ゼリフが多すぎるから、お客さんが飽きちゃう。」
「ここは律が悪い。物語のリズムが崩れている」
「この話は転調が弱い、大ボケに当たるものがないから単調」
など、しっかり理由を述べました。

その日の帰宅後、
SNSを開くと、彼女は

「今日は主宰さんを独り占めして、
脚本の書き方を習ってきました。
私だけ特別扱いイェーイ」
的な投稿をしていました。

呆れて言葉も出ませんでした。

程なくして古参の2人から
立て続けに電話がかかってきました。
2人とも、ブチ切れていました。
まあ、当然ですよね。
彼女の性格を考えて、この展開まで読むべきでした。

決定的な事件が起きたのは、
それから1ヶ月ほどたった頃です。

件の子が親御さんと喧嘩したとのことで、
「家に帰れなくなった」とのことでした。
さらに、
「仕事もアルバイトもしていないため、お小遣いが貰えないとお金がない」
という衝撃の事実も明らかになりました。

そして、稽古場から最も家が近いという理由で、
一旦私が家に泊めることになったんです。

全く気乗りしませんでしたが、
彼女を劇団に引き受けたのも私です。
ある種の責任を感じて
一晩だけ、食事と寝床だけは与えることにしました。

当然何もなかったのですが、
とにかく気疲れしました。

翌日、若手の女子団員が引き取ってくれると
言ってくれたので、交通費を渡して
送り出しました。

のちに親御さんとは和解したようで、
2日ほど泊まっただけで済んだようでしたが、
申し訳ないな、と思いました。

そもそも
「22歳にもなってなんで実家暮らしやねん」
とも思いましたが、
まあこれは個人的な偏見ですね。

さらに個人的な事を話しますと、
私には当時、結婚まで考えていた彼女がいました。
もうお互いの両親にも挨拶を済ませていて、
「あとは私が役者として成功するだけ」
という関係だったのですが、

ここで、件の子のSNSですよ笑。
私の家を出てから、
「主宰さんのおうちにお泊まりイェーイ」
的なツイートをしていたらしく、
巡り巡って恋人の目に止まり、
破局寸前になるほど怒られました。

「女性を家に泊める」なんて、
たとえ事情があっても
言えなかった私が悪いのですが。
さすがに堪えました。
泣きながら土下座しましたよ。本当に。

のちに本当に別れるのですが、
それはまた、別のお話笑。

話が逸れましたが、そんなこんなで
私以外の古参2人から「話がある」
と呼び出されました。

議題は容易に察しがつきました。
「あいつをクビにして欲しい」
「劇団の空気がおかしい」
「今回の公演、あいつのせいで失敗するぞ」

すべて、私自身も感じていた事でした。
古参2人も、別なところで彼女の被害を受けていたようで、
2人で話し合った上で私に持ってきたようでした。

たまらず私も、「脚本の件」と「恋人に土下座した件」、
そして古参のうち1人は知らなかった
「食事での失言」も吐き出しました。

私も心のどこかで、この2人の物言いを待っていたんでしょうね。
私が引き受けた手前、私が「クビ」という言葉の口火を切れなかったんです。
そして、次回の稽古で、私から彼女に伝えるという事で
話し合いを終えました。

そして、来たる稽古日、
決意を胸に私は家を出る準備をしていました。
まさかの彼女の方からラインが入りました。

「劇団やめます。お世話になりました。」

ああ、そう来たかと。
全然良いですよ。

「お疲れ様」
と一言だけ返しました。

もうこの際、
「ライン1本で済ませるんだ」
とか
「公演の役決まってるのに辞めるんだ」
とか
そんな事どうでも良かったんです。

やっと消えてくれた!

不謹慎ですが、内心そう思ってしまいました。
稽古場で皆の前で一言だけ伝えました。

「あいつ、辞めたから」
古参の2人は、溜めながら
「…そっか」と言いました。

「おいおいおいおい
本当は嬉しいくせに、
変な演技してんじゃねえよ笑。
今日の稽古終わり、
3人で飲みに行こうぜ!
旨い酒が飲めそうだな!」

もちろん心の声です。

ほかの団員も一応悲しそうな表情は作っていましたが、
この時点で全員の内心を読み切ることはできませんでした。

そうです。
まだまだ事件は続くのです!

すいませんが、もう少しお付き合いください。

その前に今日、私が履いていたスニーカーでも載せます
バンズの70年代のモデルを復刻した「ヴァン・ドーレン」です。
ラスタカラーでかわいいでしょ!

さあ、続けます笑。

不義理な形で劇団を辞めた彼女でしたが、
我々の本公演が終わった後、再び事件を起こします。

なんと、新しく劇団を結成したそうなのですが、
これだけでは問題ありません。
「ああ。あっちはあっちでやってるんだ」
で終わるのですが、

なんと、うちの若手団員2人が
メンバーとして名を連ねていたのです。

このことは、劇団外のある先輩からリークしてもらって、
初めて知ったことでした。

当たり前のことですけど、劇団に所属してる役者は
外部で仕事をする際は、
劇団側に許可を取るんです。

理由は劇団間でのトラブルを避ける為で
場合によっては「うちの〇〇をよろしくお願いします」
など、挨拶に出向くこともあります。

そして、問題がある劇団に
団員を行かせない為だったりもします。
「その劇団の主宰は暴力を振うから、
その仕事は降りたほうがいい」と
若手に教えることもでできます。

もう事務所と一緒ですね。
無許可で外部に行く行為は
「闇営業」と同じなんです。

今回のケースもそうでした。
団員側からも劇団側からも、
主宰の私になんの根回しもなかった。

しかもあちらの主宰は、
こちらに不義理を働いた人間。

これには、古参の2人のみならず、
中堅、若手含め全員が怒っていました。

「あの2人もクビにするべき」
という事で話が落ち着いていました。

最初の子のクビの時点で、
基準が出来てしまっていたんです。

「あの子は切って、2人は許す」では
示しがつきませんから。
劇団員たちの反応は当然のものでした。

ただ、「若手の2人もある意味被害者」
という意見も飛び出した為、
それを加味して

「あちらの劇団の解散」
「件の子は、こちらの劇団員に今後一切接触禁止」
「若手の2人は、3ヶ月間舞台活動停止」

の3点でまとまりました。

それ以後は一切関わっていないのですが、
風の噂で、またユニットを作って
現在も活動しているそうです。

正直、何もしないで欲しいと思っています。
業界の敷居を荒らさないで欲しい。
我々が大切に守ってきた表現活動を汚さないでほしい。

心からそう思っているのですが。

もはや関係ないですね
もう、真っ赤な他人ですから。

というお話でした。

「小さな怒りは6秒で消える」
なんて言いますが、

本気の怒りは死ぬまで消えないものだと思っています。

長々とお付き合い、ありがとうございました。